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横浜地方裁判所 昭和56年(ワ)1495号 判決 1982年12月13日

原告

柳分吉

右訴訟代理人

吉田修

中村真一

被告

静道江

右訴訟代理人

山本祐子

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

原告が別紙物件目録二記載の土地について、原告が被告に別紙物件目録一記載の家屋を返還したときは囲繞地通行権を有することを確認する。

原告が被告に別紙物件目録一記載の家屋を返還したときは、被告は原告が別紙物件目録二記載の土地に通路を開設するのを妨害してはならない。

訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。<以下、省略>

理由

一請求原因1の事実、同2の(一)の事実、同3の事実中、原告が「五七三五」の土地の西端に建築されている本件家屋を被告の実父訴外亡本多平一郎(及びその承継人)から少なくとも昭和八年ころから昭和二〇年八月一五日ころまでの間及び同月末ころから現在までの間賃借している点は当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば「五七三五」の土地はその北方において公路に接し、原告は右土地上の借家に住いし北方の公路を利用していることが認められる。

原告は、「五七三四―一」の土地は、現在所有者である原告が「五七三五」の土地上の家屋の賃借人として有する土地使用権を以て、「五七三五」の土地のうち「五七三四―一」の土地と北方の公路とを通ずるに必要かつ十分の土地部分を利用しうるから、囲繞地通行権を享有する袋地に当らないとする(そして原告は、後にも触れるとおり、囲繞地通行権の発生を妨げる事情としてこの点だけを主張している。)が、袋地か否かを決定する際には、家屋の賃借人が有する敷地及びその周辺の土地の使用権の有無は何らの影響をも持たないと考える。

借家人の有する敷地及び周辺の土地の使用権は、その範囲、態様において借家契約の目的を達するに必要な限度で許されるものであるから、一体の土地上に一戸の借家があつたとしても、借家人の有する右の使用権は、当然に一体の土地の端に及ぶとは言えないし、賃貸人が一体の土地に立入り、空地に工作物を設け、隣地との間に塀を設けるなどするに何ら妨げがないことである。他人の土地に囲繞された土地の所有者が隣接地に関してその様な土地使用権を有しているからと言つて未だ袋地でないとするのは、物と物との利用関係の調整を目的とする囲繞地通行権を定めた趣旨に反する。

いま「五七三五」の土地について言うと、原告が「五七三四―一」の土地から「五七三五」の土地の一部を介して公道に至り得ているとすれば、借家人の土地使用権から当然にそうなつているわけではなく、事実上そのような利用関係が成り立つているに過ぎないが、貸主において「五七三五」の土地の一部を公道から「五七三四―一」の土地に至る通路として承認しているかのいずれかということになろうが、前者は明らかに囲繞地の発生を妨げる通路とは言えないし、後者は借家契約とは別個の土地利用(借地或いは土地使用貸借)契約が成立している場合と言わざるを得ないが、原告の主張はこの趣旨でないことがはつきりしている。

とすれば、将来借家契約が終了したときに、かつそのことによつてはじめて「五七三四―一」の土地が袋地となることはあり得ないことになる。原告としては、端的に現在囲繞地と袋地の関係にあるとして「五七三五」の土地に通行権を有することの確認を求めるほかはない(なお、原告が求める確認の内容を右のいずれと解するにせよ、囲繞地通行権の有無は、袋地と主張された土地の所有権の範囲に準じ、その確認の利益が肯定されるものと考える)。

二原告が昭和二七年六月三〇日「五七三四―一」の土地を訴外鳥居トラ外二名から買受けたこと、右土地はもと公路に接する「五七三二―一四」の土地と共に訴外鳥居トラ外二名の所有していたものであること、現在「五七三二―一四」の土地は訴外平井朝子が所有していることは当事者間に争いがなく、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第三号証及び同第五号証によれば、右の訴外鳥居トラ外二名すなわちトラ、鳥居一郎及び鳥居朝子(昭和五一年一月一七日婚姻により平井に改姓)がその共有にかかる「五七三四―一」の土地を原告に売却した後に、昭和五一年八月二日売買により鳥居一郎の「五七三二―一四」の土地の持分全部が平井朝子に移転し、同土地の鳥居トラの持分は昭和四九年二月二日相続により全部平井朝子に移転し、これにより、平井朝子が「五七三二―一四」の土地の所有者となつたことが認められる。そうすると、原告は民法二一三条に基づき「五七三二―一四」の土地上に「五七三四―一」の土地のために通行権を有することになる。原告が昭和二七年六月三〇日当時「五七三五」地上の本件家屋の賃貸人であつたことは当事者間に争いがないが、これが袋地の発生を妨げる事情とならないことは前項で述べたとおりである。<以下、省略>

(曽我大三郎)

物件目録、図面(一)(二)<省略>

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